批判や心配な点ーネントレは残酷な方法か?

子供を一人で別室に寝かせることは「かわいそう」?

日本での伝統的な寝かしつけは添い寝なので、子供を一人で別室に寝かせることは「かわいそう」だと非難する人もいるでしょう。

畳の部屋で子供と川の字で添い寝するのが一般的だった日本人にとって、乳幼児の頃から「別室に一人で寝かせる」ことは一般的ではありません。

「泣かせておくのは残酷」?

「泣いても一定時間は放っておく」ということに嫌悪感を抱く方も多いでしょう。

ネントレの是非を議論する前にまず知って頂きたいのは、ネントレはいわば非常手段であること。

まずは親が睡眠の正しい知識を持ち、規則正しい生活睡眠リズムのための努力を尽くすことが大前提で、その時点で正しい睡眠の習慣ができればネントレの必要は全くないこと。
(「子どもと大人の睡眠の違い」・「月齢別アドバイス」他参照)

また、短期間(大概は3日間くらい)必要最低限泣かせはするが、成功すれば効果は絶大で、その効果は長期にわたること、です。

親が必要な努力を尽くしても、「親子共々慢性的な睡眠不足」であるなど明らかに睡眠に問題があれば、そこで初めてネントレを考えます(適応月齢は6カ月~)。

その場合も、ネントレが子どもにとって適切な方法であるかどうかは個々に親が慎重に吟味する必要があります。その上でネントレをすると決断したのであれば、子供を少しの間泣かせたとしても、「子供へ安眠のプレゼントをする」「結果的に子供のためになる」とは考えられないでしょうか。

最近は共働きも多く、ライフスタイルも変化してきています。変化した生活に合わせて、育児の方法も欧米流の方法を試してみるというのはどうでしょうか?

育児を手伝ってくれる同居の家族は、昔ならまだしも核家族の多い現在では期待薄。特に共働きの家庭では、夜間の睡眠を十分にとれないと日常生活が困難になってしまいます。

子供を泣かせることによる悪影響は?その科学的な裏付けは?

一人寝が一般的な欧米でのファーバー式への疑問・批判は、主に「子供を泣かせることによる悪影響は?」ということです。

ファーバー式ネントレは一人で寝付くことができるようにトレーニングする際、短時間とはいえ子供を泣かせます。これに対して、子供のに悪影響があるのではないか?という批判が根強くあります。

批判の急先鋒は「アタッチメントペアレンティング」を提唱するシアーズ博士です。シアーズ博士(注:母親と子供とのスキンシップを重視。添い寝を推奨)の著作を読んでみると、

「たとえ短時間でも泣いている子供に反応しないのは残酷なことで、何より将来的に子供の脳に何らかの悪影響を及ぼす・・・」

とあります。(シアーズ博士の批判に関する検証はこちらへ→「ネントレは脳にダメージ?」)

子供の脳にもし悪影響を与える可能性が少しでもあるのなら、心配でネントレを続けられません。

それが本当なら、どんなに大変でも大抵の方は睡眠不足の方を選ぶでしょう。ですから、少しでも可能性があるなら、ネントレを考える上で無視できない批判です。

結論から言うと、子どもの睡眠を研究する専門家の見解は、
「長期的な影響については未解明の部分も多いのでこれからの研究を待つ部分も多い」
ということです。

基本的に、子供を対象にした実験を行って科学的な裏をとることは難しく、成長後の長期的な影響の調査もあまりされていません。子供を対象にした実験には、倫理的な問題もあるからです。

しかし、ネントレに関しては、「早くから親が知識を持って何らかの対策を行うことは有効」として、いずれの方法のネントレでも有効であるとしています。(下記参照)。

《参考》

・’Behavioral treatment of bedtime problems and night wakings in young children an American Academy of Sleep Medicine Review’, Sleep, 29:10(2006),1263-76→(http://www.journalsleep.org/CurrentIssue.aspx)

「ファーバー式は子供が長く眠るのを助ける」-ミシガン大学の実験

実際に、寝つきが悪く、夜も通して寝られない子供とその親を集めて実験。ファーバー式により、有意に眠る時間と寝つきが向上したという結果。(→ミシガン大学

・「ネントレにより、長期的に見た精神面での影響は特になく、むしろ寝つきが悪い時はネントレによる恩恵の方が大きい」-“Pediatrics”に発表された論文

オーストラリアで225人の子供を7カ月から6歳まで追跡調査。225人のうち半分はネントレを行い、もう半分は全くネントレを行わないグループをつくって調査しました。この場合のネントレとは、「親が部屋の中で見守る」、もしくは「泣いたらなぐさめに部屋に戻って、子供が一人で眠りにつくのを助ける」方法。